眼瞼下垂手術後のダウンタイムは、身体が手術のストレスから回復し、新たな状態に適応するための重要な期間です。
「眼瞼下垂手術を受けたいけど、ダウンタイムの症状が不安」「すぐに職場に復帰できるのかどうか知りたい」と思われているのではないでしょうか?
この記事では、以下を詳しく解説します。
- 眼瞼下垂の原因
- ダウンタイムの期間と症状
- 切らない眼瞼下垂手術について
- ダウンタイム中の生活の工夫
眼瞼下垂手術の後悔について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「眼瞼下垂手術で後悔しないために知っておくべきことや失敗事例を紹介」
1、眼瞼下垂とは
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、下記写真のように上まぶたが正常な位置よりも下に垂れ下がってしまう症状を指します。
左の写真は、瞼が間延びして眠たそうな目になっており、真ん中の写真のように、眉毛を上げて目を開こうとすると額のシワの原因になります。
また、右の写真のようにまぶたが黒目にかかり、その結果視界が狭くなってしまうのです。
この状態は、まぶたを開ける筋肉、特に眼瞼挙筋が弱くなることで起こります。
まぶたの中には薄い板のような支持組織の「瞼板」があり、これによってまぶたの形が保たれています。
この板を眼瞼挙筋が引っ張ることでまぶたを持ち上げているのですが、この筋肉の働きが弱まって板を引っ張れなくなると、しっかり目を開くことが出来なくなるのです。
すると、黒目の上にまぶたが被さったような状態になり、視界が悪くなってしまいます。上方の視野が本来より狭くなるのです。
ただ、そうなっていることにすぐ気づける人は少なく、無自覚のまま眼瞼下垂の度合いがかなり進んでしまうケースはよくあります。
眼瞼下垂は、視野を狭めるだけでなく、頭痛や肩こりなどの身体的な不快感を引き起こす可能性があります。
また、審美的な観点からも問題となり、自己評価や自信を低下させる可能性があるのです。
眼瞼下垂を治療する手術は、以下の2つです。
- まぶたを切って行う「切開法」
- まぶたを切らない「切らない眼瞼下垂(真崎法)」
まぶたを切って行う切開法は、切らない眼瞼下垂よりダウンタイムは長いですが、確実に治療することができるといったメリットがあります。
切らない眼瞼下垂は、その名のとおり、メスによる切開を行いません。
そのため、切らない眼瞼下垂は、切開法とは異なり患者様にとっては他人から気づかれにくく、ダウンタイムが短いといったメリットがあります。
以下は、眼瞼下垂手術の切開法と切らない眼瞼下垂における比較表です。
いずれも、真崎医院で行う場合で比較しています。
切開を伴う手術 | 切開を伴わない手術(切らない眼瞼下垂) | |
手術時間 | 約50分~60分 | 約40分~50分 |
ダウンタイム | 約2~3週間腫れのピークは1週間程度 | 約1~2週間腫れのピークは2~3日程度 |
仕上がり | 組織が完全に落ち着くまで3か月程度 | おおよその仕上がりは、約1ヶ月程度 |
術後の安定度 | 高い | 中程度 |
手術のリスク | 高い(腫れ、内出血など) | 低い |
※個人差による
2、眼瞼下垂の原因
眼瞼下垂の原因は、主に上記画像の4つです。
それぞれ、詳しく解説します。
(1)生まれつき眼瞼挙筋が弱い
眼瞼下垂の一つの原因は、生まれつき眼瞼挙筋が弱いことです。
これは先天性眼瞼下垂と呼ばれ、出生直後から症状が見られることが特徴です。
この状態は、眼瞼挙筋がうまく働かないために起こります。片目だけでなく、両目に症状が現れることもあります。
先天性眼瞼下垂の場合、症状の重さによっては視力の発達にも大きな影響を及ぼす可能性があるという点に注意が必要です。
(2)加齢
加齢も眼瞼下垂の一因となります。
人間の体は年齢とともに変化し、その一部としてまぶたの筋肉、特に眼瞼挙筋が弱くなることがあります。この筋肉が弱くなると、まぶたが完全に開かなくなり、上まぶたが下に垂れ下がる状態になります。
これは後天性眼瞼下垂と呼ばれ、成長や加齢に伴ってまぶたの開きが弱くなる状態を指します。
多くの場合、加齢による皮膚のたるみや筋肉の緩みが原因で眼瞼下垂につながります。
(3)コンタクトレンズの使用
コンタクトレンズの使用による”コンタクトレンズ性眼瞼下垂”も原因の一つです。
特に目立って多いのが、ハードコンタクトレンズを長期間使用しているケースで、装着した状態で瞬きを繰り返すことにより、まぶたを内側から圧迫し、擦る刺激によって腱膜が瞼板から外れてしまいます。
また、コンタクトレンズを取り扱う際にまぶたを引き上げる動作も、眼瞼下垂を起こすきっかけになると考えられます。
コンタクトレンズ使用による眼瞼下垂の対策としては、まずはコンタクトレンズの取り扱い方を見直すことが重要です。
まぶたを強く引っ張らないようにし、眼瞼挙筋に負担をかけないように心掛けましょう。
また、眼瞼下垂が進行してしまった場合は、医療機関での治療を検討することも必要です。
(4)よく目をこする癖がある
最後に、目をこする癖が挙げられます。
目をこする行為は、眼瞼挙筋に負担をかけ、その結果、眼瞼下垂を引き起こす可能性があります。
目をこする癖による眼瞼下垂の対策としては、まずはその癖を改善することが重要です。目をこすらないように心掛け、眼瞼挙筋に負担をかけないようにしましょう。
眼瞼下垂の原因についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
3、眼瞼下垂手術のダウンタイムとは
美容医療におけるダウンタイムとは、手術を受けてから日常生活に戻れるまで(見た目の安定)の期間のことをいいます。
(1)眼瞼下垂手術のダウンタイム期間
眼瞼下垂手術のダウンタイム期間は、「切開法」と「切らない眼瞼下垂」の場合で、異なります。
①切開法の場合
一口に切開法といっても、術式にも様々なものがあり、切開法の中で最も広く行われているのが、腱膜固定術(挙筋前転術)です。
腱膜固定術では、まぶたを切開し、ゆるくなった腱膜や、瞼板との接続が切れてしまった腱膜を瞼板に再固定します。
この手術によって、腱膜がしっかり瞼板に縫いとめられると、まぶたが開くようになります。
切開法の場合の、ダウンタイムは、手術の種類や個々の体質によりますが、おおよそ2~3週間程度とされています。
傷の状態によっては、3~4カ月のダウンタイムがかかることもあります。
②切らない眼瞼下垂の場合
切らない眼瞼下垂とは、まぶたにメスを入れることに恐怖を感じる患者様のために良い手法がないかと考えたものです。
切らない眼瞼下垂の特徴は、痛みがなく手術直後からの外出が可能なほど腫れも少ないということです。
切らない手術であるため、万が一お気に召さなかった場合には糸を外して元に戻すことができるという点もあります。
切らない眼瞼下垂の場合の、ダウンタイムは、切らないので傷あとが残らないことはもちろん、まぶたへのダメージが小さいので、大幅に短くなるといえます。
こちらも個人差はあるのですが、状態のよい人なら、手術の直後でも仕事をすることができ、メイクをすることは2~3日後から可能です。
お仕事をお持ちの人に多いのは、週末に手術を受けて、月曜日には普通に出勤が可能です。
この期間は、手術による腫れや内出血が落ち着く時間であり、また、新たな生活リズムを身につけるための重要な時間でもあります。
(2)眼瞼下垂手術のダウンタイムの症状
眼瞼下垂手術のダウンタイムの症状も、「切開法」と「切らない眼瞼下垂」の場合で、異なります。
①切開法の場合
切開法の場合、ダウンタイムの症状として以下が考えられます。
- 腫れが引くまでに時間がかかる
- 内出血する
- ドライアイになる
- 視界がぼやける
- 目がゴロゴロする
それぞれ、詳しく解説します。
(ⅰ)腫れが引くまでに時間がかかる
眼瞼下垂手術後の腫れは、手術の影響で皮膚がむくんだ状態を指します。
これは、例えば寝不足や泣いた後のような感じと似ています。
まぶたは顔の他の部分よりも血管が豊富なため、手術後に腫れや赤味、内出血が起こりやすいのです。
しかし、その反面、腫れが引くのも早いため、強い腫れが起こってもそれほど心配は要りません。
腫れを引かせたい場合は、どのようにすることがいいのでしょうか。
以下に、詳しく説明します。
手術当日は、よく冷やすことが大切です。
冷やすことで炎症反応が抑えられ、ダウンタイムが短くなります。
保冷剤をガーゼに包み、まぶたの傷口に優しく当てて冷やすと、炎症が抑えられ、内出血の期間も短くなります。
手術当日の入浴は、血管の拡張により血流が増加し、傷口からの出血が止まりにくくなるため、必ず避けてください。
また、長風呂や熱いシャワーを長時間浴びる、湯船に浸かるなどは血流が良くなり、炎症が悪化するためお勧めできません。
(ⅱ)内出血する
眼瞼下垂手術後に内出血が起こることは、手術の一般的な副作用の一つです。
内出血は皮下に血液が溜まった状態で、青っぽく見えるため、「あおたん」とも呼ばれます。これは、まるで青あざができたかのような状態と理解していただければと思います。
内出血が起こる原因は、手術中に血管が傷ついて血液が周囲の組織に漏れ出るためです。
特に、まぶたは血管が豊富なため、内出血が起こりやすい部位となります。
内出血を早く引かせるための方法を以下に説明します。
手術当日から翌日にかけて出血することがあるので、当日はなるべく安静に過ごすようにしましょう。
腫れがある場合は、保冷剤等で目を冷やすと腫れが少し緩和されますが、冷やすのは当日から翌日くらいを目安にし、以降は冷やさないで下さい。
冷やしすぎると血流が悪くなり、結果的に治癒を遅らせる可能性があります。
(ⅲ)ドライアイになる
ドライアイは、目の表面が乾燥する状態を指します。
これは、眼瞼下垂手術後によく見られる症状の一つで、手術によってまぶたが開きやすくなるために起こります。
この状態を理解するためには、まず目の涙の役割を理解することが重要です。
涙は目の表面を潤滑に保つだけでなく、目の表面を清潔に保つ役割も果たしています。
涙が不足すると、目の表面が乾燥し、不快な症状を引き起こします。
ドライアイの対策としては、まず、処方された目薬を適切に使用することが重要です。
また、日中外出するときは、サングラスをかけると良いでしょう。
これにより、目がまぶしいと感じる症状を軽減することができます。
(ⅳ)視界がぼやける
眼瞼下垂手術後に視力が低下する心配はありません。
しかし、腫れが完全に引くまでは、角膜の形状が一時的に変化するため、手元が見えにくくなることがあります。
これは、まるで霧がかかったような視界のぼやけを引き起こします。
ほとんどの場合、3か月程度で回復し、徐々に見えやすくなっていきます。
視界がぼやけるという症状が出た場合、まずは冷静になりましょう。
これは一時的な症状であり、手術後の腫れが引くにつれて改善します。
その間、視力が低下することがあるため、運転や精密作業などは避け、目を酷使しないようにしましょう。
(ⅴ)目がゴロゴロする
眼瞼下垂の手術後、目がゴロゴロするという症状が出ることがあります。
これは、手術で筋膜を糸で固定するために起こる現象で、まるで目の中に小石が入ったような感覚を覚えることがあります。
この違和感は通常1~2週間で自然に治まりますが、それ以上長引く場合は診察が必要なこともあります。
②切らない眼瞼下垂の場合
(ⅰ)ダウンタイムが短く、すぐに日常時生活に戻れる
切らない眼瞼下垂の場合は、まぶたを切開することなく、眼瞼挙筋を短縮することでまぶたの位置を調整します。
この方法の最大の利点は、ダウンタイムが非常に短いことです。
例えば、あなたが一日中働いているビジーウーマンであるとしましょう。
仕事を休む時間がないため、長期のダウンタイムを必要とする手術は避けたいと考えているかもしれません。
このような場合、切らない眼瞼下垂は最適な選択肢となります。
手術後すぐに日常生活に戻れるため、仕事や家庭生活に影響を与えることなく、眼瞼下垂の治療を受けることができます。
4、切らない眼瞼下垂(真崎法)手術後の経過
真崎法の手術後の経過は、他の手術方法と比較して非常にスムーズです。
真崎医院で「切らない眼瞼下垂」を実際に行った際の手術後の経過を写真付きで説明します。
(1)Aさんの術後5日までの経過
この女性は、コンタクトレンズ性眼瞼下垂です。
ハードコンタクトレンズを30年にわたって使用した事と加齢が原因により、重度の眼瞼下垂になっていました。
厚みのあるハードコンタクトを着けて、まばたきを繰り返したり、目をこすったりしていると、腱膜が瞼板からはずれて眼瞼下垂を起こしやすくなります。
この方の手術前の写真(術前)からも、重度の眼瞼下垂を起こしてまぶたが重くなっていることがはっきりと見てとれます。
表情も眠たそうで、どこか疲れたような印象を受けます。
眼瞼下垂がこのケースぐらい重度になると、その影響で視野もかなり狭くなってしまいます。
術直後には、 目が開き、眉毛の位置が下がって額のシワが消え、若い頃のような目に戻りました。
(2)Bさんの術後1ヶ月までの経過
こちらの女性は、コンタクトレンズ性眼瞼下垂です。
ハードコンタクトレンズを長い間使い続けたことによって、眼瞼下垂になっていました。
眼瞼下垂の多くは、まぶたの支持組織である瞼板から、筋肉につながっている腱膜がはずれて起こる腱膜性眼瞼下垂です。
ハードコンタクトレンズの長期使用による眼瞼下垂は、近年非常に増えてきており、同じタイプの患者様が、当院にもたくさんいらっしゃっています。
術後は、術前の眠たそうな表情が一変し、見違えるほど目力がアップし外見の若さも若く見えます。
より詳しく知りたい方は、切らない眼瞼下垂の症例写真をご覧ください。
5、ダウンタイム中の生活の工夫
手術後のダウンタイム中は、皮膚のケアが非常に重要です。
まぶたの皮膚はデリケートなため、優しく丁寧に扱う必要があります。
また、手術部位を清潔に保つことで、感染のリスクを低減することができます。
(1)ダウンタイム中の食事と栄養摂取
手術後のダウンタイム中、身体は自己修復に全力を注いでいます。
そのため、適切な栄養摂取は、身体を効率的に回復するために不可欠です。
食事は、身体が必要とするエネルギーと栄養素を提供するための主要な手段です。
適切な食事と栄養摂取により、身体は最適な状態で回復することができます。
以下は、ダウンタイム中の食事と栄養摂取の比較表です。
栄養素 | 効果 | 摂取できる食品 |
タンパク質 | 身体の修復と再生 | 鶏肉、魚、豆腐、卵 |
ビタミンCビタミンA | 傷ついた皮膚の修復と新しい皮膚細胞の生成 | 果物、野菜 |
鉄分 | 新しい血液細胞の生成と酸素の運搬 | 全粒穀物、肉 |
(2)ダウンタイム中のリラクゼーションとストレス管理
ダウンタイム中は、リラクゼーションが非常に重要です。
これは、身体と心がリラックスすることで、回復プロセスがスムーズに進むからです。
リラクゼーションは、読書や映画鑑賞、瞑想など、自分自身を落ち着かせる活動を意味します。
これらの活動は、身体のストレス反応を減らし、回復を促進します。
そして、医師の指示を厳守することが重要です。
これには、必要な薬の服用、適切なケアの実施、定期的なフォローアップのスケジューリングなどが含まれます。
6、まとめ
眼瞼下垂手術後のダウンタイムは、手術の種類や個々の体質によりますが、一般的には1~2週間程度とされています。
この期間は、手術による腫れや内出血が落ち着く時間であり、また、新たな生活リズムを身につけるための重要な時間でもあります。
ダウンタイム中は、適切なスキンケア、栄養バランスの良い食事、そしてリラクゼーションとストレス管理が重要です。
眼瞼下垂手術は、見た目の改善だけでなく、視野の拡大や頭痛や肩こりの軽減など、生活の質の向上にも寄与します。
しかし、手術を受ける前には、手術の種類や手術後のダウンタイム、そして手術によるリスクや副作用について十分に理解することが重要です。
そのためには、信頼できる医師と十分にコミュニケーションを取り、自分自身の状況に最適な治療法を選択することが大切です。
この記事が、眼瞼下垂手術を考えているあなたの参考になれば幸いです。
眼瞼下垂について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。